国民皆歯科検診?

夏の参議院選挙における自民党の選挙公約が発表される中で、最近メディアに乗ることが多いのが『国民皆歯科検診の実現』です。財政に余裕のある自治体ではすでに実施されているところもありますが、国に主導されれば予算が組まれ全国で行われるようになります。

このニュースを聞いてSNS上では、賛否あります。日本歯科医師会は自民党の支持団体ですし、選挙に向けて歯科医師会の協力を強く得たいための政策と勘ぐる方がいるのも理解できます。しかしながら、歯科医師会会員として言うならば、歯科医師会にそんなに力はないし、歯科関係の予算を増やすと、もっと大きな支持団体である日本医師会の機嫌を損ねる可能性もあります。表向き言われている”将来的な医療費の抑制につながるため”という理由で岸田総理が判断したとしても個人的には納得します。

歯周病は強い自覚症状は急に来ることが多いですが、客観的・歯科医学的指標では無症状のままそのだいぶ前から始まっています。歯周病の治療の基本は的確な歯ブラシのマスターにあります。初期の状態であれば歯石の除去とブラッシングで大概の症例は治癒します。進行してしまうと歯の根が露出し完全な治癒は難しくなり、継続的・定期的な通院をしないと現状維持が難しくなります。重度になるとさまざまな全身疾患の悪化につながることが分かっています

そういう意味では良い制度だと思いますが、健康意識の高い方は今までも定期検診を受けていると思いますし、義務化されても罰則がないといままで受けない人の多くは受けないと思います。

 歯科治療にネガティブな印象をお持ちの方もまだまだ多いと思いますし、歯石を取られるのも快適ではないかもしれません。しかし、初期の歯周病をきちんと治療管理すると口腔内の粘つきや口臭がなくなったり、結果的に快適になるので、そのあたりを我々がもっとアピールしていかなければいけないと思います。